04-01500 顕如上人蟄穴

顕如上人けんによせうにん蟄穴かくしあな

佐野川村新川又七郎第宅やしき境地きようちやぶ林の中にあり
天正八年閏三月五日信長と本願寺和平調とゝのひ同月廿七日顕如けんによ上人紀州雜賀さいかへ御退去たいきよあるべきとて大坂より御舩にて四月九日佐野川北出の濵へ御着岸ちやくがんある
和泉の門徒等新川与市と共に新川の家宅かたくしやうし入ける時に織田のしのびのうかゞひ來るをさつやぶなかあなを深くほりて其内にかくし置けり
はたして兵卒ひやうそつ來り所々をさがしぬれともさらに隠し置躰おくていなしこれによつて又雜賀の方追駈をつかけ行けり
これよりことはざに存寄ぬ事を顕如けんによもないとは此時のことばよりいゝならはせり
信長亡滅はうめつの後貝塚御堂みだうに三年御居住の時時々より〱新川氏への來駕らいかありて祖師そし御影像みゑいざう蓮如上人御真筆に山科御建立の文章とう今に新川氏の家に秘藏ひさうしけるとそきこへし